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    • 第14回 日本運動器疼痛学会
      大会長 平田 仁
      (名古屋大学 運動・形態外科学講座 手の外科学)

     この度、第14回日本運動器疼痛学会を2021年11月20日から12月5日に完全オンライン学会の形式で開催させていただきます。名古屋大学としては初めて本学術集会を開催させていただくことになり、大変名誉であり、光栄に存じます。
    2018年に学術集会会長予定者にご選任頂いて以来、教室一丸となって名古屋駅前に立つウインク愛知での開催を念頭に鋭意準備を進めて参りました。しかし、昨年初春に始まったcovid19のパンデミックは一向に収束する兆しが見えず先の見通せない状況が続いたことから、昨年12月には現地開催はリスクが高いと判断し、理事会にもご了承もいただいて開催形式の変更に踏み切りました。久々に対面で熱く運動器疼痛の諸課題を討議することを楽しみにしていた多くの会員のご期待を裏切ることとなりましたことを始めに深くお詫びいたします。
     本学術集会のテーマは”Holistic Approach to Musculoskeletal Pain”と致しました。痛みは古来から忌み嫌われ、その克服は一貫して医療の主要なテーマであり続けています。一方で、無痛症患者の窮状から“急性痛”の重要な役割も学んできました。Niemanがコカからコカインを精製することに成功し、Halstedが伝達麻酔の基盤を作り、さらにEinhornが中枢作用のないプロカインの合成に成功したことで急性痛の制御技術は比較的短期間に確立され、瞬く間に世界中に広がりました。しかし、この成功は慢性痛の不可解な挙動を白日の下に晒すことにもなりました。今日“痛み”は国際疼痛学会により“実際の組織損傷もしくは組織損傷が起こりうる状態に付随する、あるいはそれに似た、感覚かつ情動の不快な体験”と定義されています。“痛み”は侵害情報を伝える単なる感覚情報として捉えることはできず、今日ペインマトリックスとして知られる中枢神経系の多様な領域が関わって生成される情動体験やそれに付随して生ずる様々な生体の応答までも含めて考えるべきものなのです。Bonicaは慧眼により慢性痛の本質を看破し1947年に世界初のMultidisciplinary Pain Centerをワシントンに開設して、精神科学の疼痛医学への導入の嚆矢をなしました。しかし、“身体表現性障害”という精神医学的概念を不用意に適用すれば適切な治療を受ける機会が損なわれることは容易に想像でき、また、このような行為が実際に横行しているようにも見えます。1990年にBush大統領の下で始まった”Decade of the Brain”は“疼痛”の本質でもある神経系の活動を可視化する技術の急速な発展を齎し、“心”の本質をも解き明かしつつあります。その結果、ヒステリーあるいは転換性障害と呼ばれる状況が脳のネットワーク障害として捉えられるようになり、ICD-11では従来のpsychiatryの範疇からneurologyへと移され、Functional Neurological Disorders(FND)と名称変更され、神経内科により積極的に診断・治療法が探索され始めています。CRPS患者などで見られる不可解な異常運動や精神疾患の出現もFNDという視座から再考することで合理的に理解されるようになってきました。科学技術の進歩がmulti-disciplinary approachを更なる高みへと導き始めた状況と見なすことができそうです。第14回学術集会のテーマはそのような私の思いを込めたものです。残念なことに完全オンライン開催となってしまいましたが、会長の意図も頭の片隅に置いて口演スライドを準備し、シンポジウムや講演に臨んでいただけますと幸いです。
     オンライン学会は現地開催とは異なり2週間に亘り開催されるため企画のすべてを余すことなく楽しめるという、対面での現地開催ではありえない利点もあります。先生方のご発表を拝聴することを心より楽しみにしていますし、全ての会員の皆様に存分にお楽しみいただきたいと思います。